7/11(土) 阿弖流為

7/11(土)16:30 阿弖流為 新橋演舞場 S席1階後列

 

ポスターがあまりにも格好良かったので、引き寄せられるようにチケットをとっていました。

鑑賞した感想は面白い!だけど長過ぎ。。で、もう少し後半を端折ってテンポよく進めてほしいな。歌舞伎に対して、難しいから、って敬遠している人の苦手意識の壁をまず乗り越えさせる導入として、最適なのではないかと思いました。

例によって印象に残ったところだけ。

・ステージ全般

この舞台の根本をそもそもわからずに参加してしまったので、まず、イヤホンガイドがないのはなぜ?と思ってしまいました。たまにしか歌舞伎を見ないにわかには必須アイテムなので。そのため、開幕までちょっと不安だったのですが、なるほど、口語だ。これはわかりやすい。
個人的に歌舞伎をわかりにくくしているのってやっぱりしゃべっていることが初心者には全然わからないというのがあると思います。
そのため、口語でやってくれると本当に助かりますね。

衣装やセットは全体的に中華風。まぁ、飛鳥時代ですからこんなもんだったちゃこんなもんだったんだろうな。しかし!阿弖流為の衣装がポスターから結構違っていたように感じて、それが不満。
特に顔回りのびらびらは欲しかったな。あとロングコートじゃなかったよね?あれだけ激しい動きがあるから動きやすさ重視なのだろうけど、なんか残念。。
多分歌舞伎としてみると節約気味?で現代劇としてみると大分金かかってるな!て感じなのかな。でも好評を博さなければ一か月かぎりの衣装、セットになると考えると、、しかも箱も考えると、、予算は難しいところですかね。

あと、歌舞伎だとS席16,000円ってまぁ、妥当かな?って感じなのですが、NEXT歌舞伎と銘打っていることと、客層が現代劇からもきているので、チケット代が高すぎる!って人が一定数いることを後で知りました。
確かに若干心理的壁のある金額設定かとは思いますが、内容からすると結構妥当な設定かと。

まだそう何回も上演してないはずの日程なのに客席の空気にリピーター感が結構でていてびっくり。みなさん熱心ですねー。

・役者についての諸々

中村兄弟の芸風をはじめて拝見したのですが、なるほど、という感じ。七之助は女形なのでそこまで感じなかったのですが、勘九郎は外連味たっぷり、紙一重でわざとらしくなりそうだけど、そこは絶妙の匙加減か?

お父さんの勘三郎を残念ながら生で拝見したことはないのですが、なんとなくのイメージそのままでした。役者としての華を間違いなく感じましたね。
七之助は正体を表すところが圧巻。引き込まれる。

染五郎さんは、中村兄弟に比べるとやっぱり舞台上は霞んじゃうような気がするところがちらほら。あと、声が聞き取りにくい・・・。なんだろう、のどの調子が悪かったのかな?
歌舞伎は一声二顔三姿、といわれていて、?と思っていたんですが、図らずも今回声の重要性をしみじみ感じてしまいましたね。
ただ、阿弖流為の舞台が染五郎さんプロデュースであることを考えると、プロデュース能力は高いのではないかな。

殺陣が何回もあるのですが、これがすごく格好良い。なんだろう、やっぱり歌舞伎役者がやってるからか、型がびしっとしている気がするんですよね。
あと、阿弖流為と田村麻呂のサシの勝負の時は絶対に決めポーズから入るのですが、この決めポーズがまた恰好良い!絶対にすごく苦しい姿勢だと思うので、やはり長年の研鑽あってのことなのでしょう。

・ストーリーの中の諸々
随鏡の悪事を暴くとき、「そろいもそろって大見得をきりおって!」という台詞が笑えた。歌舞伎には見得がないとね!

阿弖流為鈴鹿が都で出会ってお互いに玉を掲げあうシーンが。。微妙に安っぽい。でもこれは客席が笑ってたのも悪いと思う。

阿弖流為が神様に許しをもらいに行くところが中々良いが、ジブリ(もののけ姫)感半端ない。
(もののけ姫は個人的には自然崇拝の終焉を描いた作品だととらえているので、阿弖流為も帝という現人神による土着神荒覇吐の制圧と考えると、テーマとしては似ているのかもとかなんとか、いや違うか?)

御霊御前はわかるとして、叔父上が、ですかー、さすが!宮廷人は汚いね。そして不死身っぷりがすごい。やっぱ悪役は清々しいくらい悪で強くないと対比としての物語が面白くないよね。
しかし、御霊御前は姉上だけど、姉上が叔父上より大分年上に見えるよ?

熊子。。。実は一番印象に残ってしまったかもしれない。蛮甲との掛け合いが爆笑でありつつ、まさかの純愛で。しかし、メインストーリーにはほぼ関係ないんだよな。あんなに尺長くとる必要あるか?

・その他

あとこれは完全な私のもやっと感の吐きだしです。深い意図はありません。
全体的に衣装やセットが中華っぽいのは、まぁ良いとして、帝に対する扱いが若干ひどかったというか、んんん?と感じるところが多かった印象。
フィクションと言われればそれまでなのですが、帝を渡り人であるというとか万世一系を悪い方向に使っちゃうとか。。
阿弖流為が主人公である以上、対立軸である帝はそりゃあ悪ですよ、それはわかりますが、演出の中にそれ、ストーリーの中で言う必要ある?って感じのものが結構ちりばめられていたような気がするんですよね。
でもこれは本当に人それぞれとは思いますよ。正直、阿弖流為とか千何百前の話であって、要はファンタジーに近いのであって、ただ、日本の複雑なのは、その時から連綿と存続している家系が現代にある、ってことなんですよね。
どうしてもファンタジーの中であるはずの帝なのに今の天皇家をも想起させざるを得ないところがすごく難しいところですよね。。ということも感じました。

全体的には歌舞伎役者が歌舞伎の型をもって演じればそれは歌舞伎だ、というのが私の今回の感想ですかね。
演出や脚本は完全に現代劇のようでしたが、歌舞伎役者が演じることでただの舞台とは違う重みが加わっていたと感じました。
やはり子役の頃からしみついているだけあって動作が極めて自然なのですよね。あと大見得とか飛び六方とかすごくテンションあがりますが、あれも普通には難しいですよね。

ストーリーはまぁまぁまとまっていたと思いますが、とにかく後半が長い!疲れたよ。もう少しコンパクトにしてもらえないものか。黒縄とか熊子とか端折って良いのではないかと思った。

でも間違いなく楽しかった!前半はわくわくし通しでしたよ。再演があったら行くと思う。